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高松高等裁判所 昭和25年(う)827号 判決 1950年11月09日

控訴人 被告人 大西亀太郎 中原正義

弁護人 原田左武郎

検察官 塩田末平関与

主文

原判決を破棄し、本件を高松地方裁判所丸亀支部に差戻す。

理由

職権で調べると本件起訴状は公訴事実として「被告人両名は金品を強取せん事を共謀の上昭和二五年五月二五日午前三時頃仲多度郡神野村大字五条五九三番地の一、牛田猪三郎方裏炊事場より屋内に侵入し被告人亀太郎に於て奥中六畳の間棚の上に在つた金庫内より右猪三郎所有の現金四百円(一円札百枚束四束)を窃収し次で南十畳の間の洋服箪笥を開け金品を物色中其の物音に同家八畳の間に寝て居つた主人猪三郎(六三才)が眼を覚したので逮捕を免れる目的で猪三郎の枕元で同人を看視して居つた被告人正義に対し短刀を出す様合図したので被告人正義に於て右猪三郎に対し所携の短刀(証第一号)を突付け「金を出せ静にして居らないと殺すぞ」と申向けて脅迫し其の反抗を抑圧し尚も被告人等は金品を物色中猪三郎が大声にて家人を呼起し泥棒じやと叫んだので逃走したものである」と記載し、罪名準強盗、刑法第二三八条同第六〇条とのみ摘示し、原判決は大体右公訴事実と同旨の事実を認めた上右住居侵入の点に刑法第一三〇条を適用処断しているが原審公判調書によるも右住居侵入の罪名及び罰条を追加した形跡はこれを認めることができない。斯る場合原審は先づ検察官に右住居侵入の記載が強盗罪の単なる情状であるが、別個の訴因であるかの点につき釈明を命じ、時宜により右記載を撤回せしめ又は前記罰条の追加を命じた上審判すべかりしものである。原判決はこの点に審理不尽があり、その結果直ちには法令を適用すべからざる住居侵入の事実に罰条を適用した違法があるものといわなければならない。

よつて被告人等の各弁護人の控訴趣意に対する説明を省略し、刑事訴訟法第三九七条第三七九条第三八〇条に則り原判決を破棄し、同法第四〇〇条本文に従い主文の通り判決する。

(裁判長判事 満田清四郎 判事 太田元 判事 横江文幹)

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